ECサイト運営において、効率的な商品管理の鍵となるのが商品コードです。適切な商品コードを設定することで、在庫管理の効率化や誤出荷の防止、データ分析の精度向上など、多くの業務上の利点を得ることができます。
逆に、商品コードが不適切または統一されていない場合、業務の非効率化や機会損失を招くかもしれません。例えば、商品コードが統一されていないと在庫管理システム上で同じ商品が複数のコードで登録されてしまい、在庫数の把握が困難になります。
結果として、実際の在庫よりも少ない数で登録されていると思い込み、必要以上に発注してしまい過剰在庫を抱える、あるいは逆に在庫切れを起こし販売機会を損失するといった事態が発生する可能性があります。
本記事では、ECサイト運営に不可欠な商品コードについて、基礎知識・種類・設定方法・管理方法を包括的に解説します。具体的には、商品コードの統一による在庫管理の混乱防止や、データ活用の最適化について詳しく説明します。
商品コードとJANコードの違い
商品を識別するためのコードはECサイトや小売業では商品の管理・販売・物流など様々な場面でコードが活用されています。「商品コード」と「JANコード」の違いは以下の表の通りです。
項目 | 商品コード | JANコード(GTIN) |
---|---|---|
名称 | 商品コード、自社コード、 インストアコード | JANコード、GTIN |
範囲 | 企業内 | 国際的 |
目的 | 社内における商品管理 | 商品の国際的な識別と情報共有 |
管理者 | 各企業 | GS1 |
コード体系 | 企業が自由に設定 | GS1が規定 |
構成 | 数字、英文字、記号など | 8桁または13桁の数字 |
取得方法 | 企業が独自に設定 | GS1に申請 |
費用 | 不要 | GS1への加盟費、JANコード発行費用が必要 |
適用範囲 | 社内システム | 各企業のシステム、国際的な取引 |
ここでは、商品を識別するコードの中でも特に重要な「商品コード」と「JANコード」について詳しく解説し、両者の違いを明確にします。
商品コードとは?
商品コードとは商品を一意に識別するために企業が独自に割り当てるコードの総称です。自社で自由に設定できるため、「自社コード」「インストアコード」などとも呼ばれます。数字・英文字・記号などを組み合わせて作成され、在庫管理・受発注管理・売上分析など、企業内の様々な業務で利用されます。
JANコード(GTIN)とは?
JANコード(Japanese Article Number)は、日本で使用される標準化された商品コードであり、国際的にはGTIN(Global Trade Item Number)と呼ばれます。GS1という国際機関によって管理・発行されており、世界中の多くの企業やシステムで共通して利用可能です。主にPOSシステムでの商品登録や在庫管理、物流管理などに活用され、消費者にとってはバーコードを読み取ると商品情報を確認できるという利点があります。
商品コードの役割と重要性
商品コードは現代のビジネス、特にサプライチェーンマネジメントにおいて必須の要素です。単なる商品の識別子にとどまらず、企業内外のデータ連携を支える基盤として機能します。適切に設計・運用された商品コードは在庫管理システム(WMS)や販売時点情報管理システム(POS)といった多様なシステムと連携し、リアルタイムな在庫状況の把握、販売動向の分析、需要予測の高精度化を可能にします。
商品コードのメリット
商品コードのメリットは業務プロセスの自動化・効率化によるコスト削減効果です。人手による作業を減らして、人的ミスを抑制し、業務のスピードと正確性を向上させます。また、データの一元管理による情報共有の促進も大きなメリットです。部門間での情報伝達の齟齬をなくし、スムーズな連携を促します。これにより、意思決定のスピード向上、顧客対応の迅速化、ひいては顧客満足度の向上に繋がるのです。加えて、蓄積された商品データは市場トレンド分析や新商品開発など、経営戦略策定のための貴重な資源となります。
JANコードの役割と構成
JANコード(Japanese Article Number)はGS1が管理する世界共通の商品識別コードGTIN(Global Trade Item Number)の日本における名称です。POSシステムにおける迅速な商品登録、サプライチェーン全体にわたる在庫管理、物流管理の効率化を目的として開発されました。JANコードは国コード・企業コード・商品コード・チェックディジットで構成されています。13桁の場合、最初の2~3桁が国コード(日本は45または49)、続く5~7桁がGS1事業者コード(旧:メーカーコード)、その後の5桁が商品アイテム参照キー、最後の1桁がチェックディジットです。GS1事業者コードはGS1に加盟し、GS1会社プレフィックスを付与された企業にのみ割り当てられる固有のコードです。
JANコードのメリット
JANコードの最大のメリットは国際的な標準規格である点です。世界中の企業間で商品情報を正確に交換できるため、国境を越えた商取引を円滑にします。また、JANコードは単なる番号ではなく、GS1データベースとリンクしています。これにより、商品情報の一元管理が可能となり、サプライチェーン全体の透明性向上に寄与します。消費者にとっても、JANコードを読み取ることで、産地や原材料など詳細な商品情報にアクセスできるため、購買判断の材料として活用できます。これは、企業のブランドイメージ向上にも繋がります。
適切な商品コードの設定方法
商品コードはWebサイト運営、特にECサイトの運営において重要な役割を果たします。適切な商品コードを設定することで、商品管理の効率化、在庫管理の最適化、売上分析の精度向上など、多くのメリットを得ることができるのです。
ここからは、商品コードを作成する際のポイントと具体的な設定ルールについて詳しく説明します。
SKU
SKU(Stock Keeping Unit)は在庫管理の最小単位を表すコードです。同じ商品でも色・サイズ・素材など、異なるバリエーションごとに個別のSKUが割り当てられます。例えば、あるTシャツに赤・青・緑の3色があり、それぞれS・M・Lの3サイズがあるとします。この場合、SKUは合計9つです。
SKUは企業が自社で自由に設定できるため、在庫管理システムに合わせて柔軟に運用できます。在庫状況を正確に把握し、効率的な在庫管理を実現するために重要な役割です。SKUを活用して特定のバリエーションの商品の売上動向を分析することもできます。
商品コード設定のポイント
商品コードを作成する際にはいくつかの重要なポイントがあります。ポイントを押さえると、効率的で誤りの少ない商品管理システムを構築可能です。
まず、商品コードは数字の「0」から始めてはいけません。一部のシステムでは、0から始まるコードを正しく認識できない可能性があるからです。
また、日本語や記号も使用を避けましょう。多くのシステムは半角英数字のみ対応しているため、互換性の問題が発生する可能性があります。大文字と小文字もどちらかに統一する必要があります。システムによっては、大文字と小文字を区別しない場合があり、誤認識につながるからです。記号については、一部例外として「-(ハイフン)」が使われる場合もあります。
さらに、商品コードの桁数が短すぎると商品バリエーションを十分に表現できない一方、長すぎるとシステムの処理速度に影響を与える可能性があります。適切な桁数を設定するのが重要です。特に、商品コードが重複してしまうと在庫管理や受発注管理で深刻なエラーが発生する可能性があります。
商品コードは一度、設定すると後から変更や修正ができないケースが多い為、事前に慎重に社内ルールを決めて設定することを推奨します。
具体的な設定ルール例
商品コードを作成するための具体的なルール例を紹介します。
まず一つ目の例として、「メーカー名」「商品名」「商品グレード」「カラーコード」を組み合わせる方法です。例えば、メーカー名が「ABC」、商品名が「XYZ」、グレードが「Premium」、カラーが「Red」の場合、「ABC-XYZ-PR-RD」のようなコードを作成できます。
二つ目の例として、ブランド名・商品番号・色・サイズを組み合わせてコードを作成する方法です。例えば、「ブランドA」の「商品001」で、「青色」「Sサイズ」の場合は、「A001-BL-S」のようなコードになります。
これらを参考に、自社で管理しやすい商品コードを作成しましょう。
商品コードの活用による業務効率化のポイント
商品コードは単なる商品の識別子ではなく、ECサイト運営のさまざまな側面で業務効率化を実現するためのツールです。在庫管理・受発注管理・売上分析など、多くの業務プロセスを改善できます。
商品マスタで一元管理
商品マスタとは商品に関するあらゆる情報を一元的に管理するデータベースです。商品コードはこの商品マスタにおいて、各商品を一意に識別するためのキーとして機能します。
商品マスタには、以下のような商品に関するあらゆる情報が登録されます。
- 商品名
- 商品説明
- 価格
- 画像
- 在庫数
- 仕入先情報 など
商品コードを適切に設定し商品マスタを一元管理すると、複数チャネルでの商品情報の一貫性を保ち、情報の更新や修正の手間を大幅に削減可能です。在庫状況のリアルタイムな把握や正確な売上分析、効率的な受発注管理も実現できます。
在庫管理・受発注管理・売上分析への活用
商品コードは在庫管理・受発注管理・売上分析など、ECサイト運営におけるさまざまな業務で活用可能です。
在庫管理では商品コードをバーコードやQRコードと連携させると商品の入出庫や棚卸し作業を効率化できます。バーコードリーダーで商品コードを読み取るだけで在庫数が自動的に更新されるため、手入力の手間を省けるのです。受発注管理では商品コードを基に受注情報を処理すると、迅速かつ正確な注文処理が可能です。
また、売上分析では商品コード別に売上データを集計すると、商品の販売動向を詳細に分析できます。どの商品がよく売れているのかや、どの商品が売れ残っているのかを把握すると販売戦略の改善や在庫管理の最適化を実現します。
バーコード・QRコードとの連携
商品コードをバーコードやQRコードと連携させれば、さらなる業務効率化が可能です。バーコードやQRコードは商品コードを視覚的に表現したもので、専用のリーダーで読み取れます。在庫管理や受発注管理の際に、バーコードリーダーで商品コードを読み取るだけでシステムに情報を入力できるため、作業時間を大幅に短縮できるでしょう。
手入力によるミスを防ぎ、データの正確性を高める効果も期待できます。さらに、棚卸し作業もバーコードリーダーを利用すると従来の手作業に比べて格段に効率化が可能です。
商品コード運用における注意点
商品コードはECサイト運営の効率化に役立ちますが、運用には注意が必要です。商品コードの重複や変更、欠番の管理などのポイントを理解していないと、予期せぬトラブルが発生する可能性があるからです。
スムーズなECサイト運営のためにも、商品コード運用における注意点をしっかり確認しておきましょう。
商品コードの重複
商品コードの重複はECサイト運営において重大な問題を引き起こす可能性があります。重複した商品コードがあると、在庫管理システムが商品を正しく認識できなくなります。誤った在庫数に基づいて、発注や出荷が行われてしまう可能性が高いです。
商品コードの重複を防ぐためには、システムに商品コードの重複チェック機能を組み込みましょう。商品コードを発行する際に厳格なルールを設けるなど、定期的に商品コードの重複がないか確認するのが有効です。
商品コード変更のリスク
商品コードの変更はシステム全体に影響を及ぼす可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
商品コードを変更すると、既存のシステムやデータベースとの互換性が失われる可能性があります。特に、ほかのシステムと連携している場合、商品コードの変更はデータの不整合やシステムエラーを引き起こす可能性があります。
また、商品コードの変更は従業員の混乱を招き、作業効率の低下につながる可能性も高いです。新しい商品コードへの移行期間中は従業員への十分なトレーニングとサポートを行いましょう。
さらに、商品コードの変更は顧客にも影響を与える可能性があります。例えば、顧客がブックマークしていた商品ページにアクセスできなくなるからです。変更による顧客への影響を最小限に抑えるために、適切な告知やリダイレクト設定をしてください。
欠番の管理
欠番とは、一度使用されたあとに使用されなくなった商品コードを指します。欠番を再利用すると過去のデータと混同したり、システムエラーが発生したりする可能性があります。そのため、一度使用した商品コードは原則として再利用せず、永久欠番での管理が必要です。
欠番を管理する方法としてはリストを作成し、定期的に更新する方法や、システムに欠番管理機能を組み込む方法などがあります。
棚卸しとの連携における在庫精度
棚卸しは倉庫や店舗に保管されている商品の数量を実際に確認する作業です。
商品コードにより棚卸し作業を効率化し、在庫精度を向上させるうえで重要な役割を果たします。商品コードとバーコードを連携させ、バーコードリーダーを利用しましょう。商品コードを読み取るだけで、商品の数量をシステムに自動的に入力できます。
スタッフ教育の重要性
商品コードを適切に運用するためには、スタッフへの教育が不可欠です。スタッフが商品コードの重要性や使用方法を理解していなければ、商品コードの効果を最大限に発揮できない可能性があります。
定期的な教育を実施すると、スタッフの知識とスキルが向上します。商品コードの運用におけるミスやトラブルを、未然に防止可能です。
TEMPOSTAR(テンポスター)なら複数EC店舗間で同一商品の商品コードが統一されていなくても紐づけて管理をする事ができます
TEMPOSTAR(テンポスター)は複数のネットショップを一元管理できるシステムです。商品情報・在庫状況・受注情報などを一括で管理できるため、業務効率の大幅な向上が期待できます。
TEMPOSTARでは「商品SKU統一コード」を利用して、各ショップで販売している商品を紐づけすることが可能です。「商品SKU統一コード」とは、同一商品を複数のショップで販売している場合、それぞれのショップに登録されている「商品コード」が異なる場合でも、同一商品として認識させるために設定する、TEMPOSTAR独自のコードです。
管理しやすい商品コード設定で管理ミスが起きにくい運用を行いましょう
ECサイト運営には効率的な商品管理が不可欠です。適切な商品コードを設定すれば在庫管理の効率化・出荷ミス防止・データ分析の精度向上など多くのメリットが得られます。
商品コードは商品識別のために使われ、在庫管理・受発注管理・売上分析などさまざまな業務において効率向上に貢献します。しかし、JANコード・自社コードなど種類があり、それぞれ特徴が異なる点には注意が必要です。
設定の際は、以下の点に注意しましょう。
- 数字の「0」で始めない
- 日本語や記号を使わない
- 大文字小文字を統一する
- 適切な桁数にする
- 重複を避ける
例を参考に、管理しやすい適切な商品コードで、管理ミスが起きにくい運用を行いましょう。