EC事業者にとって在庫管理は非常に重要です。効率的な在庫管理を行うことで、資金繰りを改善し、利益率を向上させることができます。この記事では、在庫回転率について詳しく解説し、在庫回転期間や適正在庫の計算方法を紹介します。
在庫回転率とは
在庫回転率とは、一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す指標で、商品回転率とも呼ばれます。
たとえば在庫回転率が10回であれば、その期間に在庫が10回入れ替わったことを意味します。仕入れた商品が売れて、また仕入れる。このサイクルが何回繰り返されたかを表す数字です。
在庫回転率を計算することで、企業は在庫管理の効率性や資金繰りの改善に役立つ情報を得ることができます。
在庫回転率の計算方法
在庫回転率の計算方法には、次の2種類があります。
- 在庫数による計算:在庫管理の実務に向いています
- 金額による計算:財務諸表の作成や、経営判断をするときに向いています
数量で求める方法
在庫回転数を在庫数量で求める場合の計算式は以下になります。
在庫回転率= 出庫数 ÷ 平均在庫数
平均在庫数=(期首在庫数 + 期末在庫数)÷ 2
金額で求める方法
金額で求める方法は、財務・経営判断に使う場合に適しています。決算書の数字からそのまま算出できるためです。
在庫回転率(金額ベース)= 売上原価 ÷ 平均在庫金額
平均在庫金額 =(期首の棚卸高 + 期末の棚卸高)÷ 2
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
分子に売上高ではなく売上原価を使う点に注意してください。売上高には利益が含まれるため、原価で評価した在庫金額と単位が揃わず、回転率が実態より高く出ます。
分母は期末の棚卸高ではなく、期首と期末の平均を使います。在庫は期中に増減するため、期末の一時点だけでは実態を反映しません。セール直後や大量仕入れ直後の期末在庫を使うと、回転率が大きくぶれます。
在庫回転率の計算例(数量ベースと金額ベース)
ここまでの計算式に実際の数字を入れて計算してみます。以下は説明用に設定した数値で、数量ベースと金額ベースを同じ会社の数字で並べています。
数量ベースの計算例(商品A・1年間)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 期間中の出庫数 | 2,520個 |
| 期首在庫数 | 260個 |
| 期末在庫数 | 340個 |
平均在庫数を先に求めます。
平均在庫数 =(260個 + 340個)÷ 2 = 300個
在庫回転率 = 2,520個 ÷ 300個 = 8.4回転
この商品は1年間で在庫が8.4回入れ替わったことになります。
金額ベースの計算例(同じ会社の全社・1年間)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 年間の売上原価 | 1,680万円 |
| 期首の棚卸高 | 220万円 |
| 期末の棚卸高 | 260万円 |
平均在庫金額 =(220万円 + 260万円)÷ 2 = 240万円
在庫回転率 = 1,680万円 ÷ 240万円 = 7回転
同じ会社を見ているのに、商品Aの数量ベースは8.4回転、全社の金額ベースは7回転と数字が変わります。商品ごとの売れ行きと、在庫に寝ている資金の効率は別の話だからです。数量ベースは商品単位の売れ行きを見るのに向き、金額ベースは資金効率を見るのに向きます。どちらが正しいということはなく、目的で使い分けます。
端数は小数第1位まで残すことをおすすめします。上の8.4回転を「8回転」に丸めると、前期比で8.4→8.1と落ちていても同じ「8回転」に見えてしまい、変化を追えなくなるためです。
在庫回転期間(在庫回転日数)の計算方法
在庫回転期間とは、在庫が1回入れ替わるまでにかかる日数です。在庫回転率が「何回転したか」を表すのに対し、在庫回転期間は「何日で入れ替わるか」を表します。同じ実態を別の単位で見ているだけなので、どちらか一方が分かればもう一方を計算できます。
在庫回転期間(日)= 平均在庫金額 ÷(売上原価 ÷ 365)
在庫回転期間(日)= 365 ÷ 在庫回転率
現場では「回転率7回」より「52日分の在庫がある」と言った方が伝わる場面が多くあります。発注の判断や倉庫スペースの見積もりは日数で考えるためです。
在庫回転期間の計算例
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均在庫金額 | 240万円 |
| 年間の売上原価 | 1,680万円 |
1日あたりの売上原価 = 1,680万円 ÷ 365日 = 約4.6万円
在庫回転期間 = 240万円 ÷ 4.6万円 = 約52日
約52日分の在庫を持っている状態です。もう一方の式でも検算できます。在庫回転率は7回転なので、365 ÷ 7 = 約52日となり一致します。月単位で見たい場合は365ではなく12で割ります。
目標の在庫回転率から必要な在庫量を逆算する
在庫回転率は「計算して終わり」ではなく、目標から逆算して在庫量を決める使い方ができます。
目標在庫回転率 = 売上目標原価 ÷ 目標平均在庫金額
上の会社が「8回転まで上げたい」と決めているなら、売上原価目標1,680万円に対して平均在庫を 1,680 ÷ 8 = 210万円までに収める必要があります。現状の240万円から30万円分を圧縮する、という具体的な目標に変わります。
この逆算ができると、仕入れ計画の上限が数字で決まります。発注のタイミングそのものを決める指標については、発注点とは(発注のタイミングの決め方)で解説しています。
業種別の在庫回転率の目安
在庫回転率の適正値は業種で大きく変わります。参考値として、経済産業省の調査による業種別の商品(製品)回転率を示します。
| 業種 | 商品(製品)回転率 |
|---|---|
| 製造業(製品) | 11.1回 |
| 卸売業 | 19.9回 |
| 小売業 | 11.4回 |
| 飲食料品小売業 | 17.1回 |
出典:経済産業省「商工業実態基本調査報告書 総括編」第2章4.中小企業の商品(製品)回転率(平成10年=1998年の調査)
この数値は1998年の調査であり、現在の実態とは異なる可能性があります。また売上原価ではなく売上金額を用いて算出されているため、本記事で示した計算式より高い数値が出ています。同じ条件で自社と比較できる数字ではないため、あくまで業種間の相対的な傾向を見る参考として扱ってください。
業種で差が出るのは、扱う商品の性質が違うためです。生鮮食品のように賞味期限が短い商品は回転を速くしなければ廃棄が発生します。一方、家具や産業機器のように単価が高く購入頻度の低い商品は、回転が遅くても事業として成立します。他社の数字と比べるより、自社の前期・前年同期と比べる方が実用的です。
在庫回転率は高ければ高いほど良いわけではない
回転率が高い状態は、在庫に寝ている資金が少なく効率が良いことを意味します。ただし高すぎる場合は次のリスクが出ます。
- 欠品による販売機会の損失:在庫を絞りすぎると需要の変動を吸収できません
- 調達コストの増加:発注回数が増え、1回あたりのロットが小さくなるため単価が上がり、発注業務の工数も増えます
- 納期遅延の影響を受けやすい:仕入れ先の遅延がそのまま欠品に直結します
欠品が起きる原因と対策については、欠品とは(欠品が起きる原因と対策)で詳しく解説しています。
回転率は上げるほど良いのではなく、欠品を許容できる範囲で上げる指標です。
在庫回転率を把握するメリット
在庫回転率を計算すると、感覚で判断していた在庫の状態が数字で見えるようになります。
売れている商品と滞留している商品が判別できる
在庫金額の合計だけを見ていると、どの商品が資金を占めているか分かりません。商品ごとに回転率を出すと、金額は小さいが回転が遅い商品と、金額は大きいが回転が速い商品を区別できます。在庫削減の対象は、金額の大きい商品ではなく回転の遅い商品です。
顧客の需要の変化に気づける
回転率は需要の変化を反映します。前期まで8回転だった商品が5回転に落ちていれば、売れ行きが鈍っているか、仕入れ過多になっているかのどちらかです。売上金額だけを見ていると、在庫を増やして売上を維持している状態を見逃します。
キャッシュフローと保管コストを改善できる
在庫は仕入れ代金を支払い済みの資産です。回転が遅い在庫は、その分の資金が動かせない状態を意味します。回転期間が52日なら、仕入れ代金を支払ってから現金として戻るまで52日分の資金が拘束されている計算です。保管スペースの賃料や管理工数も、回転の遅い在庫ほど積み上がります。
在庫回転率を上げる方法
在庫回転率を上げることは、資金繰りや収益性の向上に繋がるため、企業にとって重要な課題です。以下に、在庫回転率を上げる方法をいくつか紹介します。
需要予測の精度向上
需要予測の精度を向上させることで、適切な在庫水準を維持し、在庫過剰や在庫切れを防ぐことができます。過去の販売データや市場動向を分析し、需要予測に役立てましょう。
商品カテゴリの見直し
商品カテゴリやアイテムの見直しを行い、売れ筋商品に注力することで、在庫回転率を上げることができます。また、売れ行きの悪い商品は、在庫を減らすか、取り扱いを見直すことも検討しましょう。
販売促進策の実施
販売促進策を実施することで、商品の販売を促し、在庫回転率を上げることができます。値引きセールやプロモーション活動、クーポンの配布など、効果的な販売促進策を検討しましょう。
仕入れ先との連携強化
仕入れ先との連携を強化し、リードタイムを短縮することで、在庫回転率を上げることができます。発注や納品のスケジュール調整について協力を仰ぎ、在庫管理の効率化を図りましょう。
在庫管理システムの導入
在庫管理システムを導入することで、在庫管理の効率化や在庫水準の最適化が可能になります。リアルタイムで在庫情報を把握し、適切な発注計画を立てることができるため、在庫回転率を上げることができます。
季節商品の管理
季節商品は、需要が時期によって大きく変動するため、在庫管理が難しいことがあります。季節商品の在庫管理には、過去の販売データを参考にし、需要のピークが予想される期間に適切な在庫を用意することが重要です。また、季節が終わった後は、在庫を効果的に売り切るためのセールやプロモーション活動を実施しましょう。これにより、在庫回転率を上げることができます。
デッドストックの削減
長期間売れ残っているデッドストックは、在庫回転率の低下に繋がります。デッドストックを削減するために、定期的に在庫の見直しを行い、適切な販売促進策や値引きセールを実施しましょう。
ABC分析を活用
ABC分析を活用して、商品を売上や利益性に応じてグループ分けし、在庫管理の優先度を決定します。Aグループ(高い売上や利益性を持つ商品)の在庫管理に重点を置くことで、在庫回転率を向上させることができます。
返品・廃棄品の管理
返品や廃棄品も在庫回転率に影響を与えるため、適切な管理が求められます。返品・廃棄品の原因を分析し、品質管理や販売方法の改善を行うことで、在庫回転率を上げることができます。
継続的な改善
在庫管理は一度に完璧にすることは難しいため、継続的な改善が重要です。定期的に在庫回転率を計算し、改善点を見つけて改善策を実行しましょう。これにより、資金繰りの改善や収益性向上、業績の向上に繋がる効果的な在庫管理が実現できます。
複数モール・複数倉庫で在庫回転率を測るときの注意点
楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなど複数のモールに出店している場合、計算式は同じですが、出庫数と平均在庫数をどの単位で取るかで結果が変わります。
在庫を1つのプールとして各モールに見せている(共通在庫方式)なら、出庫数はモール横断で合算します。モールごとに在庫を割り振っている(按分方式)なら、モール別に回転率を出せます。共通在庫方式なのにモール別の回転率を出そうとすると、按分の根拠がないため意味のない数字になります。
もう1つは、受注後に引き当てた在庫(論理在庫)と倉庫にある在庫(実在庫)を区別せずに期首・期末の数を取ると、平均在庫数がずれる点です。引き当て済みの在庫が各モールで二重に計上されると、平均在庫数が実態より大きくなり回転率が低く出ます。どちらの基準で取るかを決め、期首と期末で同じ基準を使ってください。
自社倉庫と外部倉庫を併用している場合は、合算の回転率だけでは倉庫間の偏りが見えません。片方に滞留在庫が溜まっていても、もう片方の回転が速ければ全体では正常に見えるためです。倉庫別に平均在庫数を出したうえで、合算も併せて確認してください。
さらに、各モールへの在庫反映には時間差があります。TEMPOSTARの場合は5分〜10分間隔で各モールに連動するため、期末在庫をモールの管理画面の数字で取ると、反映待ちの分だけ在庫管理側の数値とずれます。期首・期末の在庫数は在庫管理側の数値で取るのが原則です。
複数モールの在庫を手作業で突き合わせている状態では、期首・期末の在庫数を正確に取ること自体が難しくなります。詳しくはEC一元管理システムとはで解説しています。
在庫回転率に関するよくある質問
在庫回転率とはどういう意味ですか?
一定期間に在庫が何回入れ替わったかを示す指標です。商品回転率とも呼ばれます。数値が高いほど在庫が短期間で売れており、在庫に寝ている資金が少ない状態を意味します。
在庫回転率の計算式は?
数量ベースは「出庫数 ÷ 平均在庫数」、金額ベースは「売上原価 ÷ 平均在庫金額」です。いずれも平均在庫は「(期首 + 期末)÷ 2」で求めます。期末の一時点だけを使うと、期中の増減が反映されず数値がぶれます。
在庫回転率は高ければ高い方がいいですか?
高いほど資金効率は良くなりますが、高すぎると欠品のリスクが上がります。発注回数が増えることで仕入れ単価と発注業務の工数も増えます。欠品を許容できる範囲で上げる指標と考えてください。
在庫回転率と在庫回転期間はどう違いますか?
同じ実態を別の単位で見たものです。在庫回転率は「何回転したか」、在庫回転期間は「何日で入れ替わるか」を表します。「在庫回転期間(日)= 365 ÷ 在庫回転率」で相互に変換できます。
まとめ
在庫回転率は「出庫数 ÷ 平均在庫数」または「売上原価 ÷ 平均在庫金額」で求められ、「365 ÷ 在庫回転率」で在庫回転期間(日数)に変換できます。平均在庫は期首と期末の平均を使う点が計算のポイントです。
EC事業者の場合は、モール別に在庫を持つのか1つのプールとして共有するのかで、同じ商品でも出す数字が変わります。計算の前に、どの単位で在庫を数えているかを決めてください。
まずは主力商品について、期首在庫・期末在庫・期間中の出庫数の3つを揃えて計算してみてください。数値が出たら、次は前期と比較して増減の理由を確認する段階に進めます。
在庫管理システムの導入ならTEMPOSTAR(テンポスター)!
在庫管理システムを導入する際は、EC一元管理システム「TEMPOSTAR(テンポスター)」もぜひご検討ください。
TEMPOSTAR(テンポスター)なら在庫管理の効率化・自動化を実現でき、できた時間でよりクリエイティブな業務に注力することができます。
各店舗や倉庫間の在庫情報を自動連携できるため、手動による在庫更新の必要がありません。
カスタマイズ性も高く、業務効率化にも活かしやすいシステムといえますので、ぜひ一度資料をご覧いただき、TEMPOSTAR(テンポスター)の機能などを確認してみてください。
TEMPOSTARはASPタイプでありながら個別機能開発(カスタマイズ)に対応可能なサービス。EC事業規模が小規模の段階はASPの基本機能で運用を行い、事業規模が大規模となり他システムとの連携などから自社の運用を更に進化させて継続して利用する事が可能です。


